先に物損の示談を行う場合に注意すべきこと
1 先に物損を示談すること自体は可能
物損と人損の示談は、必ずしも同時に行う必要はありません。
むしろ、物損の示談を先に済ませることの方が多いです。
例えば、怪我の程度が軽く、通院期間が短いような場合には、人損の示談までそれほど時間がかからないことがあります。
そのような場合には、物損と人損をまとめて示談することも可能です。
しかし、怪我の程度が重く、長期にわたって治療や通院が必要な場合には、人損の示談は治療が終了してからになります。
示談までに数か月、あるいはそれ以上の時間を要することになります。
その間、車の修理ができない状態が続いたり、修理工場から費用の支払いを求められることもあります。
そのような事態を避けるためにも、物損については先に示談を済ませておく方が現実的です。
2 過失割合に注意
物損の示談を人損よりも先に行う場合には、「過失割合」に注意が必要です。
例えば、追突事故のように被害者側に過失がない場合であれば、過失割合が問題になることは基本的にありません。
ただし、示談内容が妥当なものであるかは、しっかり確認する必要があります。
一方で、双方に過失があると考えられる事故の場合には、慎重に対応する必要があります。
物損の示談時に合意した過失割合が、人損の示談にも影響を及ぼすためです。
例えば、物損の示談時に「20:80」という過失割合で合意したとします。
すると、人損の示談の際にも、その割合が基準となり、損害額のうち20%が自己負担として差し引かれる可能性があります。
もちろん、後になって過失割合を見直すことも不可能ではありません。
しかし、一度物損の示談で合意した割合を後から覆すのは、交渉の上で非常に難しいのが実情です。
実務的には、物損で決まった過失割合が、そのまま人損にも適用されると考えた方がよいでしょう。
3 弁護士にご相談を
物損の示談は人損の賠償にも大きな影響を与える可能性があります。
物損の示談を行う際には、人損への影響をよく考えた上で、慎重に判断することが大切です。
物損でお困りの方は、一度弁護士にご相談ください。